源氏の君ような方
ウエストがキュッとくびれているせいで、ヒップは実際よりも大きく見えました。
後ろ姿は自分ではめったに見ることがありませんけど、主人がわたくしのヒップに執着していることから考えても、そう悪い形であるはずがないと思っております。
混んだ電車に乗らないようにと、日頃から主人に言われているのも、乗れば必ず痴漢にお尻を触られるせいでした。
ああ、また、あの方のアルトのささやきです。
「ベッドに横になってもらえますか」
「はい」
仕立てのよいジャケットを脱いでクロゼットのわたくしの上着の隣に掛けてしまうと、あの方がわたくしの横たわるベッドに近づいてきます。
この方は本当の紳士でいらっしゃるんだわ。
だから、契約を破ることなんか、あるわけはないのよ。
わたくしは何度も自分に、そう言い聞かせました。
契約を破られてしまうんじゃないかと心配だったのか、ですって?
とんでもない。
反対です。
わたくしは、契約違反をしてでも、あの方に抱かれることを望んでいました。
キシッとベッドが小さな音を立てました。
糊のきいたワイシャツの布地がこすれて、薄桃色の乳首が勃ち上がってしまいます。
ジャケットと靴を脱いだだけのあの方が、全裸で横たわるわたくしの身体に覆い被さってきました。
「はぁ……っ……」
首筋に熱い吐息を感じて、わたくしの女の園は湿り気を帯びてくるのでした。
服を全部脱がされて、ベッドに横たわるわたくしに、あの方が覆い被さってきました。
ジャケットと靴を脱いだだけのあの方は、王子様のように美しい顔をしていました。
もちろん日本人ですから、絵本や映画で見たような西洋の王子様ではありません。
けれど、ほかに言いようがないくらいに上品で貴族的な雰囲気のある方なのです。
今、なんとおっしゃいました?
光源氏!
そう、そうなのです。
まさに、あの方は、源氏の君ような方でございました。